親が他界する前に、親名義の不動産などの財産を子供名義に変更する手続きを行えば贈与とみなされます。
生前贈与した場合には贈与税の対象となりますが、贈与財産の評価額や贈与する人、贈与を受ける人の年齢次第では大幅な節税効果を得ることができます。
しかし相続のほうが得になるケースもありますので、親から子に対して不動産を継承させる場合、どちらが得になるかトータル的に考えることが大切です。
生前贈与を行うメリットは?
相続の場合、遺言で誰に財産を継承するか決めていても、他の相続人が遺言内容に意義を申し立てることで遺言通りに相続が行われないこともあります。しかし生前贈与の場合、生前に行えば贈与する人の意思が確実に反映されるので、兄弟姉妹同士で相続争いが起きることを避けることに繋がるでしょう。
また、相続になったときの相続税の負担を軽減する方法としても活用できることがありますが、要件次第では効果を得ることができない場合もあるので確認が必要です。
□メリットだけでない点に注意
なお、不動産を贈与した場合には不動産取得税や登録免許税を負担しなければなりません。贈与税は相続税よりも税率が高いので税負担が大きくなります。実際、生前贈与を行ってもそれほど大きな節税にはならない可能性もあるでしょう。
さらに生前贈与の契約が一度成立してしまうと、他の方法には切り替えることができなくなるので、その後、制度改正などで相続税を選択したほうがよかったという場合に不利になる可能性もあります。
トータル的にどちらの負担が重くなるかを比較し、よく検討した上で行うようにしましょう。
□どのようなケースにおいて生前贈与が有効か
生前贈与でメリットがあるのは、将来、評価額が上昇する可能性がある財産の贈与です。贈与税の場合、贈与が成立した時点での財産の評価額に応じて税率が適用されることになります。そのため、後に評価が上昇する可能性があるなら、先に贈与したほうが税負担を軽減できると考えられます。
相続税のほうが得になるケースとは?
相続税の場合でも基礎控除額が設けられており、「3,000万円+600万円×法定相続人数」までは税金が掛かりません。
一般的なマイホームの相続なら、非課税となる範囲でおさまることが多いのも特徴です。さらに不動産を取得しても原因が相続なら不動産取得税は課税されません。
また、65歳以上の親が20歳以上の子に対して贈与する場合には「相続時精算課税制度」の対象となるので、基礎控除額が2,500万円まで設けられます。贈与した人が亡くなったときには贈与した財産も相続財産としてカウントされることになりますが、先に贈与税を支払っている場合には相続税からその分を控除できます。
これらも踏まえた上で生前贈与か相続かを決めることが大切です。
安易に判断しないことが大切
2015年1月に税制改定が実施され、実質、相続税は増税されています。それに伴い、生前贈与への関心も高まっている状況ですが、生前贈与と相続のどちらの節税効果が高いかはそれぞれの状況によって異なりますので安易に判断しない様にしましょう。